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コットン神話を検証する

「そうはいっても、コットンでつけないと化粧水がしっかりつかない」という人がいますが、それは本当でしょうか。コットンにまつわるまことしやかな俗説が世間にはびこっているようですので、これらをひとつずつ検証してみましょう。

①たたきこまないと、しつかり肌に「入らない」
化粧品が肌に浸透するかどうかは、ほとんど成分で決まります。たたいたりすりこんだりしても、入るものは入るし入らないものは入らないのです。水性よりも油性のもののほうが入りやすい、また分子量が小さいもののほうが入りやすいという傾向があり、その条件を満たさないものはたたいても入りません。網の上に砂利をばら撒いたところを想像してください。粒子の小さい砂や小石は勝手に網をくぐっていきますが、大きいものは綱の上に残りますね。肌に化粧品をつけたときはこれと同じ現象がおきており、入るものは入って人らないものはそのまま表面に残ります。

化粧品成分の中でも、奥に浸透して効果を発揮する成分はそのように設計されていますし、保湿成分などの表面にとどまって効果を発揮する成分はとどまるように設計されているので、手で押し込んだりしなくてよいのです。網の上の大きな石は、押してもたたいても人らないし、強くたたけば網がいたむかもしれません。肌も同じで、入らないものを入れようとパンパンたたくことは、肌をいためるだけでメリットはないのです。たたいていると「入った」気がするという人がいますが、それはどうしてでしょう。つけた化粧水のビシャビシャ感がなくなったことで「全部入った」と満足する人が多いようですが、それは入ったのでなくほぼ蒸発してしまったのです。化粧水の大半は水なので、たたいている間に蒸発していきます。飛び散る分もあるでしょう。化粧品が浸透するかどうかは化学現象です。もっというと、肌の上で起きていることはすべて化学的な反応です。人の手で操作できるものではないのです。

②コットンでつけないとむらづきになる
化粧品を肌にむらなく均等につけたいのであれば、均等に肌のうえにのせればよいのです。砂利を均等に網にのせるイメージです。均等にのせれば、小石は均等に網をくぐっていきますね。コットンでたたくと恐らく、かえってむらになるでしょう。ほほ骨の部分はたたく衝撃を強く受けるので、化粧品はまわりに飛び散り、肌に入る量は少なくなると想像されます。

③手が吸いとってしまう
手が化粧水を吸ってしまうから顔にいかなくなるという、奇妙な説があるようです。手に化粧水をとると、スポンジのように瞬時に吸い込んでなくなってしまう人がいるとしたら、ぜひ一度拝見したいものです。手が栄養を吸ってしまうという詰もあるようですが、手の皮膚には、栄養成分だけを抽出して瞬時に吸い取るような特殊な機能は存在しません。手にとった化粧品やその成分が吸い込まれてしまうならば、手で洗剤などを触ることはきわめて危険です。また手が瞬時に栄養を吸ってしまうならば、素手で調理をしていると栄養をどんどん吸ってしまい、手作りの料理などは栄養豊富とは程遠いものになります。

手が吸い取ってしまうと危惧することが杞憂であることはお分かりいただけたと思いますが、実は手と顔で比べたら、手のほうがものを吸収しにくい皮膚になっています。案外知られていないことですが、化粧品などの成分は、その多くが皮膚から吸収されるときに毛穴を通して吸収されていきます。手には毛穴がないので、ものを吸収しにくいのです。手の皮膚はいろいろなものを触っても大丈夫なように、うまくできているということです。顔は皮膚が薄く、さらに毛穴が大きく密なので、非常にものを吸収しやすい部分です。人体の皮膚で特にものを吸収しやすいのは、顔と陰部です。

「脂とり紙は皮脂をとりすぎる」は本当か

ちなみに脂とり紙で皮脂をとると、とりすぎになって肌が乾燥するという話があるようですが、これは間違いです。脂とり紙で皮脂を全部とることはできないからです。一口に皮脂といってもいろいろな成分が混じってできています。中性脂肪、コレステロール、ワックスなどが皮脂の成分の主なもの。このような複雑な組成のため、皮脂は常温では一部が液状で一部は固体です。脂とり紙では液状の部分はとれますが固形の部分はもちろんとれないので、全部とれてしまうことはないのです。脂とり紙を使うことは、酸化した皮脂による肌荒れや老化を防ぐので、肌にとてもよいことです。

またティッシュでとるという人もいますが、ティッシュは繊維が肌をいためるのでNG。脂とり紙がベストです。洗顔の主な目的は、古くなった皮脂を落とすこと。肌の保湿のための皮脂の役割はそれほど重要ではありません。皮脂を落としても肌には問題はないので、しっかり洗い流しましょう。洗顔のときに使うものは、固形石鹸がおすすめです。泡は手と顔の間のクッションになる程度あれば十分です。Tゾーン→Uゾーンの順で、こすらないよう洗いましょう。洗顔直後は多少つっぱる感じがして、そこで保湿ケアをするとしっとり落ち着くというくらいが適度な洗い上がりです。

化粧水やクリーム・美容液などをコットンでつけるか手でつけるかという論争がありますが、これはずばり手が正解です。毛がふわふわの猫ちゃんでも、水をかければ毛はぺしゃんこ。ふわふわではなくなりますね。ふわふわのコットンは肌にやさしいといううたい文句で売られていますが、コサトンもやはり濡れれば空気が抜けて硬くなります。これで肌をたたくと肌に刺激を与えてしまい、長年の間には肌が黒ずむ原因になります。特に、ほほ骨のあたりが要注意。下に骨がある部分は、力が強くかかります(物理で習ったニュートンの運動の第三法則である「作用・反作用の法則」です)。

ほほ骨の部分は常にたたいたりこすったりという刺激にさらされるので、お手入れに熱心な人ほど黒ずんでいる傾向があります。長年かけて少しずつ黒ずんでいくので、自分でたたいたりこすったりして肌が黒ずんできていても、案外本人は気づかないものなのです。私はこれを「刺激黒皮症」と呼んでいます。ほほ骨の部分にできる肝斑というシミが最近話題になっており、女件ホルモンのバランスがくずれてできやすいといわれますが、肝斑と刺激黒皮症はよく混同されます。むしろ、肝斑ができる原因は女性ホルモンだけでなく、女性たちがよくこの部分をたたいたりこすったりして刺激していることも関係しているのではないかとさえいわれています。スポーツジムのパウダールームなどでよく、パンパンと大きな音をたてて化粧水をたたきこんでいる人を見かけます。

チラツと拝見すると、ほほが真っ赤になるまで熱心にたたいている人もいます。この赤みが炎症つまり肌がいたんでいるサインであり、炎症は少しずつ肌の中にメラニンを生むのです。こういう方は刺激黒皮症予備軍です。化粧水でも美容液でも何でも、スキンケア化粧品はすぺて手でつければよいのです。刺激黒皮症の治療はとても難しいものです。まずレーザー治療は、通常あまり適しません。刺激しないこと、紫外線にあたらないことを厳重に注意しながらビタミンCイオン導入を地道に続けていくと、ある程度薄くなることが期待できます。ちなみに顔でなくボディの皮膚をこすって黒ずんでしまうものは、昔から摩擦黒皮症として知られています。

洗顔の実際

洗顔時は、まず手と顔をぬるま湯でぬらし、洗顔料を泡立てます。レモン大くらいの量があれば十分です。泡をTゾーンからのせていき、Uゾーンに広げます。みけんや小鼻のわきなどは洗い残しやすいので注意して、薬指などで細かく洗います。手と肌の間にはつねにクッションになる程度の泡があることを意識し、決してこすらないように。顔が卵だとしたら割らない程度の力で洗います。手のひらにぬるま湯をすくったら、そこに顔をつけるようにしてすすぎます。手が肌にほとんど触れないように、お湯をかける感覚で洗います。入浴中に洗顔する人はシャワーを顔にかけてもよいですが、その際は湯の温度は少し低めの37~8度にしましょう。

髪の生え際やもみ上げの部分はすすぎ残しやすいので気をつけて。すすいだあとに、一度手でさわって肌の感触を確かめましょう。油分が残っているようであれば、そこだけもう一皮石鹸で洗います。指がキュツというのが、きちんと皮脂が落ちたサインです。やわらかいタオルで押さえるように水気をとったら終了です。洗顔で皮脂をとると、それを補うためにかえって皮脂が出てオイリーになるという話を最近よく耳にします。確かに高校生くらいの皮脂がとても多くなる年代に、気にして顔を洗いすぎ、かえってオイリーになった経験を持つ人もいるようです。

つまりそれはありうることなのですが、しかし、誰にでも当てはまるものではありません。皮脂はある程度必要で作っているものなので、とり去ってしまうとまた作ろうとするということも実際あります。しかし、皮脂を作る皮脂腺の機能にも限界があります。もともと皮脂腺が小さくて働きも弱い人の場合、皮脂をとってもその分をさらに作ることができない場合もあります。つまり、もともと皮脂が少ない人の場合は、とればとるほど皮脂はどんどんなくなっていくだけということになります。反対にオイリー肌の人の場合は、頻繁に皮脂をとるとかえって皮脂が増えてしまうことがあります。この仕組みを詳しく解説します。

皮脂は、毛穴から分泌されると肌の表面に皮脂膜という膜を作ります。皮脂腺には圧力を感じ取るセンサーがあり、皮脂膜がある程度の厚さで形成されるとそれを庄で感じ取って、皮脂を作る量を自然に減らします。例えば洗顔をすると、皮脂膜がなくなるので皮脂腺は活発に皮脂を作り始めます。約二時間たつと皮脂膜が再生してくるので、それを皮脂腺が感知して皮脂の生産はゆるやかになります。このときの皮脂の量を飽和皮脂量といいます。ただしここでまた洗顔して皮脂をとってしまうと、それを感知した皮脂腺は皮脂を作り始めます。これを頻繁に繰り返すと、皮脂腺が常に活発に活動していることになり、次第に皮脂腺が活性化して余計にオイリー肌になってしまうことがあるのです。しかしこれは、先ほど述べたように皮脂腺の活動がもともと低い人ではあまり起こらない現象です。

人間の能力はすべてそうですが、生まれつきの限界があり、鍛えればなんでも活性化するというものではないのです。もともとの能力が高い人のほうが、鍛えればさらに高まるものですね。同様の理屈で、メイクをしているほうが、多少、皮脂が抑制されるといわれます。メイクは肌の表面に膜を張るので、皮脂膜のように皮脂腺に圧をかけることになります。よって、すっぴんでいるよりもメイクをしているほうが皮脂を作る量は抑えられるのです。オイリーでニキビに悩んでいるからノーメイクという人がときどきいますが、むしろ多少したばうが、肌のためにはよいのです。ただし油分が多いクリームファンデーションなどはもちろんニキビを悪化させますから、パウダーファンデーションを使いましょう。

〇〇配合の石鹸

オーガニックなどのハーブを含んだ石鹸や、セラミド配合、ビタミンCや美白成分を含んだものまで、さまざまな美容成分を含んだ石鹸が売られています。しかし、石鹸は流すものなので、成分の大半はすすぎのときに流れてしまうので効果はあまり期待できません。石鹸は本来汚れを落とすもの。そこに別の効果を求めることは難しいのです。セラミドやビタミンCなどを肌に与えたいのであれば、それらを含んだ化粧品を洗顔後につけるのがもちろん、一番効果的です。洗いながら保湿するなど、あれもこれも多機能をうたう化粧品が流行りですが、欲張りは禁物。道具や家電も、シンプルなもののほうが案外使いやすくてしっかり機能を果たすものが多いですよね。それと同じことです。

石鹸はシンプルで、かつ安いものでかまいません。内容成分にあまり違いがないからです。スキンケア全体のコストを落としたい場合、石鹸は1000円以下のものでも大丈夫です。ただし、けちってはいけないものもあります。クレンジングは前述したように肌に与える影響が大きいので2000円以上、またスキンケアの要となる保湿美容液は3000円以上を目安としましょう。化粧水は使わなくてもかまいません。洗顔は泡が命とよくいいますが、それは俗説です。綿菓子のようにモコモコと泡を立てることは楽しいですし、その綿で包まれた肌は美しくなれるような気分がするかもしれませんが、その綿に特別な効果があるものではありません。

泡の意味は、肌への摩擦を防ぐことです。洗顔時に指が直接肌を摩擦すると肌がいたむので、それを防ぐために泡を立てるのです。そのためにはレモン大程度の量があれば十分です。やたらと泡立ちのよい洗顔料は、界面活性剤を多く含む可能性があるので注意しましょう。ポンプを押すと初めから泡で出てくる洗顔料も、便利だからと最近人気がありますが、界面活性剤の強いものもあるので要注意。やはり無難なのは、固形石鹸です。泡の質や量よりも、洗顔料の成分のほうがよほど肌に影響します。肌に合った洗浄力のものを選べば、泡にこだわる必要はないのです。不器用で泡立てがうまくできないことを気にしている人もいるようですが、それは無用な心配です。

多少しゃびしゃびな泡でも、肌をこすらないことさえ気をつければ問題はないのです。洗顔料をモコモコに泡立てる達人のような人がいますが、泡を立てても洗顔料の成分は同じで、特別肌によいものに変わるわけではありません。生クリームは泡立ててもやはり生クリームであるのと同じです。もしも強い界面活性剤を含む洗顔料を使えば、いくら立派な泡を立てたとしても肌に悪いものであることにはなんら変わりはありません。うちの子供たちに風呂掃除をさせると、だいたいいつも洗剤で泡をモコモコに立てて遊んでいますが、いつまでたっても風呂はきれいになりません。泡を立てられる人が掃除上手ではないことはいうまでもありません。

保湿の三因子

肌の水分を守っているのは①セラミド、②天然保湿因子、③皮脂の三つで、これをあわせて保湿の三因子といいます。三因子といってもその役割は3分の1ずつではなく、肌のうるおいに対する働きは、セラミドの働きが約80%、天然保湿因子が17~18%、皮脂は残りの2~3%といわれます。皮脂がうるおいのために重要だと考えていた人は、保湿に対する考え方を改めましょう。なお天然保湿因子とは分子の小さいアミノ酸などの集まりで、角質細胞の中にあって水分を維持していますが、空気中の湿度が下がるとその働きも低下します。つまり、冬場などの最も乾燥が激しくなる時期にはあまり働かない、ちょっと頼りない存在です。

ただ、化粧品に配合したときの使用感がよく、また原料として安価であるというメリットがあるため、化粧水などによく配合されています(アミノ酸配合の化粧水などがそうです)。洗顔料にもいろいろありますが、おすすめは固形石鹸です。クリームやミルク状などの洗顔料を使っている人が多いようですが、これらはものによってかなり中身にばらつきがあります。固形石鹸は昔ながらの石鹸成分を主体としたものが多いですが、クリームやミルク状の洗顔料は強い界面活性剤を多く含むものもあります。界面活性剤はスキンケアにおいて必要なものですが、強すぎると肌荒れの原因になります。クリームやミルク状の洗顔料では、見た目で中身がわからないので、どの程度の界面活性剤が入っているかがわかりません。

石鹸を選ぶほうが無難だといえます。洗顔石鹸も、オイリー肌用から乾燥肌用まで、洗浄力によっていろいろなものがあります。自分の肌に合わせて選びましょう。洗顔直後は多少つっぱる感じがして、そこで保湿ケアをするとしっとりして落ち着くというくらいのものが肌に合っているといえます。洗った直後からまったくつっぱり感がないものは弱すぎです。反対に、いくら保湿してもあとからガサガサになってきてしまうものは、洗浄力が強すぎであなたの肌にあっていないのです。また、いろいろな有効成分を配合した石鹸もありますが、流してしまうものなのであまり効果は期待できません。洗うことだけを目的とした、シンプルな石鹸がよいでしょう。